豚肉は生で食べられず、しっかり火を通さないといけないことは一般的ですよね。
ではなぜ豚肉は生で食べられないのでしょうか? あるいは、どうにかすれば生で食べられる可能性はあるのでしょうか?
豚肉が生で食べられない理由:危険な菌やウイルス、寄生虫がいる可能性があるから
豚肉には肉の内部にまで次のような危険な菌やウイルスが存在することが多いです。
①食中毒菌: サルモネラ菌やカンピロバクター
ヒトや動物の消化管に生息する腸内細菌であり、下痢、腹痛、発熱、悪心、嘔気、嘔吐、頭痛、悪寒、倦怠感などの症状が出ます。
重症化や死亡は稀ですが、抵抗力のない乳幼児や高齢者は特に注意が必要です。
②ウイルス: E型肝炎ウイルス
肝臓の細胞を壊すウイルスであり、だるさ、黄だん(皮膚や粘膜が黄色くなる)、発熱などの症状が出ます。
症状が出ても大半は治りますが、稀に劇症化・死亡することもあります。
③寄生虫: 有鉤条虫
サナダムシの一種でヒトの腸管に寄生し、数mサイズの体長の成虫へ生育していくこともあるようです。
腸管から脳や眼に移行する例もあり、この場合重篤化します。
・・・いやはやおそろしいですねぇ。
では豚肉が菌やウイルス、寄生虫に汚染されているのはなぜでしょう?
それは次のような理由があると考えられます。
①食肉処理の過程において、菌等の付着している腸管や血液が肉片に触れてしまう可能性がある
肉を解体していく過程において、肉と腸管や内臓を分けていく際に触れてしまう、汚染された血液や体液が付着してしまう、ということが起こり得ます。処理場での衛生管理の進歩や徹底により汚染低減がされていますが、完全に対処するのは難しいようです。
(これについては牛でも鶏でも同じ問題です)
②養豚場の環境中において、豚の糞に排泄された寄生虫卵を経口摂取により感染するというサイクルが起こる
養豚場で豚が寄生虫卵を経口摂取し、これが小腸で孵化します。孵化した寄生虫は肝臓や肺等体内を移行していき、小腸へ戻り産卵します。この卵が糞とともに排泄され環境中に散らばり、また別の豚が経口摂取してしまうのです。養豚場でも衛生化や駆虫薬、消毒で対策をしていますが、完全に対処するのは難しいようです。
厚生労働省によれば、平成27年6月12日から食品衛生法に基づいて、豚のお肉や内臓を生食用として販売・提供することを禁止しています。
また、昨今ジビエの人気も高まってきていますが、野生の鹿やイノシシも生で食べることはたいへん危険です。豚肉の話と同じように、そしてそれ以上に自然界で菌・ウイルス・寄生虫に感染している可能性がとても高いからです。
ではやはり豚肉を生で食べることは絶対できないのでしょうか?
・・・いえ、なんと実はドイツには豚の生食文化があるのです。
ドイツでは生の豚肉も食べる
ドイツには「メット」と呼ばれる生の豚挽肉を用いた食べ物があるのです。
これは、生の豚挽肉を塩胡椒で味付けし、パンに塗るなどして食べるものようですね。
ドイツには「挽肉についての指示」(Hackfleischverordnung) という法律があり、肉処理の際に寄生虫等の検査をする、その日に作ったものしか販売できない、等の厳しい管理がなされているのです。
また、味の方は、ネギトロのような食感と癖のない塩気のある食べやすい味のようです。
日本国内では、危険な菌・ウイルス・寄生虫の感染リスクが高いため、豚肉は生で食べることはできません。
ただし、ドイツへ行けば生の豚肉料理を食べることができます。
ドイツへ旅行する機会などがありましたら、自己責任の範囲で生の豚肉を試してみるのも悪くないかもしれませんね。
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