今の時代、食分野での研究が進んだことで、鶏の餌によって卵の栄養機能を高められるということがわかっています。
その知見によってヨード強化卵を筆頭にビタミンDやDHA(ドコサヘキサエン酸)を強化あるいは含んだ卵が商品化されブランド化などもされていますね。
実は日本で初めてこのようなブランド卵を出したのは、あの「ヨード卵・光」を生み出した日本農産工業株式会社なんですよ。
今回は、鶏の餌と卵の栄養の関係と「ヨード卵・光」誕生の歴史についてご紹介します。
鶏の餌と卵の栄養の関係
食分野での研究が進んだことで、鶏に与えた餌がその鶏の産んだ卵に与える影響が分かっています。
つまり、鶏の食べた餌に含まれる栄養が卵に移行するのですが、餌の栄養分を増やせば単純に卵に多く移るのではなく、移行量が増加するものとそうでないものとがあります。
移行量が増加する栄養としては以下のものがあります。
・一部のミネラル・・・ヨウ素、フッ素、マンガンなど
・脂肪酸・・・リノール酸、オレイン酸、DHAなど
・ビタミン・・・ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、葉酸 など
・カロテノイド色素・・・ルテイン(卵黄の黄色の色素成分)
移行量が餌で変わりにくい栄養としては以下のものがあります。
・タンパク質
・脂質
・炭水化物
・一部のミネラル・・・カルシウム、ナトリウム、鉄 など
例えば「ヨード卵・光」は、ニワトリの飼料に海藻粉末などを配合することにより、ニワトリの体内でヨード(ヨウ素)が自然な形で卵に移行し、
普通の卵に比べて約76倍のヨウ素を含む卵です。
※ヨード(ヨウ素)とは、海藻類に多く含まれ、甲状腺ホルモンを生成するのに欠かせないミネラルの一つです。
日本初のブランド卵 「ヨード卵・光」の誕生
ヨード卵・光を開発した日本農産工業株式会社(以下ノーサン)の前身である日本栄養食料株式会社は、昭和6年(1931)に創業。
「日本人に廉価で良質な蛋白食品をもっと豊富に供給しよう」という構想の下に正田貞一郎氏によって設立されました。
時を経ること昭和30年代はじめ、当時の千葉大学薬学部では「ヨードと甲状腺機能」に関する研究が進められていました。
ノーサンは、この研究に関わっていたのですが、その研究の中で、鶏の健康のためにヨードを与えると鶏卵中にヨードが移行することが報告されました。
この時にヨード卵の原型が出来つつあったそうです。
そこからノーサンは具体的な商品化を意識して、基礎研究から開発研究へと研究の幅を広げていきました。
商品化の決め手となったのは、昭和48年に東北大学陛学部内科で「高コレステロール血症患者で血中コレステロール値が低下する」結果が報告されたことです。
その後,飼料中のヨード含量と卵中へのヨードの移行量の相関,安全性の確認などの基礎研究を進めた上で,昭和51年(1976)、「ヨード卵・光」は発売に至ったのです。
これは、開発から発売まで25年もの歳月がかかった、なかなかの難産の卵だったのです。
なお、「ヨード卵・光」の由来は,ヨードを多く含有する卵であり健康改善機能を持つことから,
健康回復,健康長寿など生きる希望・光明を見出すことができること,また、この事業の輝かしい将来の期待から「光」としたものです。
それまで日本には名前がついた卵というものは存在しておらず、この時 日本初のブランド卵となったのです。
しかし、はじめは販売に苦労したようです。
1個50円と当時の一般の卵の3倍ほどの価格で売り出しましたが、前例のない卵に対してなかなか理解を得られずお店に置いてもらえなかったのです。
そこで当時の販売スタッフは、 「コレステロール値を下げる効果がある卵なんです。ぜひ置いていただけませんか」と小売店を1軒1軒交渉して回るなどしていたそうです。
そんな地道な努力を重ね、しだいにメディアにも取り上げられるようになるなどしながら、日本初の 誰もが知っているブランド卵として成長していったのです。
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